ゼッフィレルリ演出の「ラ・ボエーム」

NHKハイビジョンで放送されているメトロポリタン歌劇場のライブ・ビューイング、2回目はプッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」でした。2008年4月5日の公演。

新演出ではなく、メットでも何度も上演されてきた名舞台、フランコ・ゼッフィレルリ演出のものによる上演というところがミソです。キャスト等は、

ミミ/アンジェラ・ゲオルギウ
ロドルフォ/ラモン・ヴァルガス
ムゼッタ/アインホア・アルテタ
マルチェルロ/リュドヴィク・テジエ
コルリーネ/オレン・グラドゥス
ショナール/キン・ケルセン
ブノア及びアルチンドロ/ポール・プリシュカ
 指揮/ニコラ・ルイゾッティ
 演出と美術/フランコ・ゼッフィレルリ

上演そのものが素晴らしかったのはもちろんですが、このシーズンのプロダクションは特別な意味を持っていました。
第2幕と第3幕の間に今回の案内役ルネ・フレミングから紹介があったように、メトロポリタン歌劇場で50年間で11作品を演出してきたゼッフィレルリがメットの功労者として表彰されたのです。

これまでゼッフィレルリが手掛けてきた舞台のハイライト・シーンと、2008年3月29日にボエームの公演で行われた表彰式の模様も放送されていました。
もちろんゼッフィレルリ自身へのインタヴュー付き。

ハイライト・シーンは次の9点。

トスカ(1985)、カヴァレリア・ルスティカーナ(1978)、道化師(1978)、カルメン(1997)、ファルスタッフ(1992)、ドン・ジョヴァンニ(1990)、オテロ(1979)、トゥーランドット(1987)、ラ・ボエーム(1982)

記録によると、ゼッフィレルリの演出がメットに初登場したのは1964年のファルスタッフだったようですね。
残る2作品のうち、一つは1966年にメットの委嘱で世界初演されたパーパーの「アントニーとクレオパトラ」であることは間違いないでしょう。もう一つは何だっのでしょうか。

ゼッフィレルリは1923年、フィレンツェの生まれ。最初は俳優としてキャリアをスタートさせましたが、後に演出家、デザイナーに転出。ルキーノ・ヴィスコンティのアシスタントとしてオペラ演出に長く携わってきた人です。オペラ映画も手掛けていましたね。

今回のボエームでも確認できますが、手法はあくまでもリアリズムでしょう。そして細部への拘り。ヴィスコンティ譲りと言っても良いかも知れませんね。

映像を舞台の細部に注意して見ていると、例えばボヘミアンたちの屋根裏部屋にナポレオンの胸像が置かれてあったりします。
単にテレビ画面で舞台を見、オペラを聴くのではなく、目を凝らして演出の細部に注目するのも楽しみ方の一つだと思います。何度も繰り返して再生するのに耐え得る名舞台。

私は1982年の同じプロダクション(ストラタスとカレラス出演)を何度もレーザー・ディスクで鑑賞しましたが、今はディスクを整理してしまって手元にありません。今回の放送はそれに代わるディスクとして保存しましょう。

ゲオルギウは往時に比べれば様々な点で衰えはありますが、歌唱芸術という点では更に円熟の度を増していると思います。第1幕のアリアなど、“Art of Singing”。

私の大好きなヴァルガスは文句なし。他のキャストも歌唱・演技共に素晴らしいし、脇役にプリシュカが出ているのもメットの強みでしょう。

幕間に紹介されていましたが、児童合唱がこのプロダクションに2年間もリハーサルをしてきた由。歌よりも演技に厳しい訓練が行われたというエピソードには納得。
舞台転換の早業と、その舞台裏も大変な見物でした。

 

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